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MTC-MRAによる未破裂脳動脈瘤スクリーニング

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    【はじめに】

    近年の医学の進歩にも関わらず、くも膜下出血患者の半数以上は死亡するか重度の障害を残すことになる。脳内出血・脳梗塞などと異なり、くも膜下出血は40〜50歳代の働き盛りの壮年層に好発し、その社会的・経済的な損失は計り知れない。くも膜下出血の原因である脳動脈瘤を、破裂する前に発見し適切な処置を行うことが、くも膜下出血予防にとって最も重要である。

    近年(磁気共鳴診断装置)MRIの普及により、受診者に苦痛を与えることなく動脈瘤の発見が可能となってきた。ところがMRIによるスクリーニングは、検診に用いているMRI装置・撮像方法・担当者の読影力などにより、偽陽性率(実際には動脈瘤はないのに、動脈瘤があると診断してしまう。)・偽陰性率(動脈瘤があるのに、見落としてしまう。)とも大きな差があることが指摘されている

    【日下医院での脳動脈瘤スクリーニング;1992〜1995年】

    日下医院では1992年より、MRI/MRAによる脳動脈瘤のスクリーニングを行ってきた。1992〜1995年までは、GE社製のSigna Advantage(1.5T)を用いて、一般に行われているタイム・オブ・フライト法(TOF)によるMRAによる検査を行っていた。この間に51例(63個)の動脈瘤が、診断・治療されている。Thin slice MRA,source imageなどを併用し、MRAによる見落としを最小限に押さえてきた。

    この期間の偽陰性例・偽陽性例ともに4例で、偽陰性率・偽陽性率は6.3%であった。

    (CI研究18(1):23-29,1996)

    【日下医院での脳動脈瘤スクリーニング;1996〜2000年】

    1996年以降は同じくGE社製のSigna Horizon(1.5T)が導入され、magnetization transfer contrast(MTC;磁化移動画像)を用いた撮像が可能となった。MTC−MRAでは、MRA作成時にノイズとなる静止組織からの信号を抑制することにより、動脈瘤を含む脳血流からの信号をノイズのない画像にすることができる。また1996年以降は、直径3mm以上の動脈瘤の偽陰性率を0%とすることを目標に、全例にmanualにてtarget MIP処理を行っている。

    現在のところ、偽陰性・偽陽性ともに0%である。

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